2026年8月19日

継続する「はきけ」「むかつき」―長引く場合は一度原因を調べましょう
「はきけ」「むかつき」は、消化器症状の中でも非常によくみられる症状です。
「なんとなく胃がムカムカする」
「吐くほどではないけれど、ずっと気持ちが悪い」
「朝になると気持ちが悪い」
「食事をすると、むかついて食べられなくなる」
このような症状で悩まれている方も多いのではないでしょうか。 今回は、特に注意したい**長く続く「はきけ」「むかつき」**についてお話しします
一時的な「はきけ」と、長く続く「はきけ」は分けて考えます
下痢や腹痛とほぼ同時に始まった「はきけ」「むかつき」は、ウイルス性胃腸炎などの急性胃腸炎でよくみられます。
この場合、多くは数日程度で改善していきます。
一方で、
「何週間もむかつきが続いている」
「良くなったり悪くなったりを繰り返している」
「食事のたびに気持ちが悪くなる」
という場合には、何らかの原因が隠れていないかを考える必要があります。
「痛みがないから大丈夫」
「食事は一応とれているから大したことはないだろう」
と考えて、そのままにしないことが大切です。
朝に起こる「はきけ」「むかつき」
朝起きたときに気持ちが悪い場合、胃の病気だけが原因とは限りません。
消化器以外の原因も含めて考える必要があります。
ストレス・精神的な緊張
精神的なストレスが強いときに、朝を中心に「はきけ」や「むかつき」が起こることがあります。
脳と胃腸は自律神経などを介して密接につながっています。
仕事や学校、人間関係などによる緊張や不安が続くことで胃腸の動きが変化し、実際に「気持ちが悪い」「食欲がない」といった身体症状として現れることがあります。
決して「気のせい」という意味ではありません。
(今はいろいろな薬があり、メンタル面にアプローチ治療法も出来ます。)
自律神経の乱れ・低血圧
起床時には、睡眠中の状態から活動する状態へと自律神経が切り替わります。
この切り替えがうまくいかない場合や血圧が低い場合、朝に
・気持ちが悪い
・だるい
・立ちくらみがする
・食欲がない
といった症状が現れることがあります。
特に若い方では、起立性調節障害なども考える必要があります。
薬の副作用
薬によって「はきけ」「むかつき」が起こることもあります。
鉄剤、抗うつ薬、一部の抗菌薬、鎮痛薬など、さまざまな薬が原因となります。
また最近では、糖尿病や肥満症の治療に使用されるGLP-1受容体作動薬などで、胃の動きがゆっくりとなり、はきけや食欲低下が起こることがあります。
新しい薬を開始した後や、薬の量を増やした後から症状が始まった場合には、薬との関連も考えてみましょう。
食後に起こる「はきけ」「むかつき」
食事の後、特に脂っこいものを食べた後に症状が起こる場合には、胃だけでなく、胆のう・胆管・膵臓などの病気についても考える必要があります。
膵臓の病気
膵臓は食べ物、特に脂肪などを消化するために重要な臓器です。
慢性膵炎など膵臓の病気では、食後に上腹部の不快感や痛み、はきけなどがみられることがあります。
慢性膵炎は長期間の多量飲酒などが原因となることがありますが、アルコールを飲まない方にも起こります。
血液検査だけでは診断できないこともあり、腹部超音波(エコー)検査、CTなどの画像検査が重要になります。
そして、中高年以降で新しく出現した症状が長く続く場合には、頻度は高くありませんが、膵がんなどの病気を除外することがとても重要です。
特に、
「最近になって食後の気持ち悪さが続くようになった」
「食欲が落ちてきた」
「理由なく体重が減ってきた」
といった場合には、一度、腹部超音波検査を受けることをおすすめします。
胆石・胆管の病気
脂っこい食事の後に症状が強くなる場合には、胆石症など胆道系の病気も考えます。
胆石が胆管に落ちて詰まる総胆管結石症では、みぞおちから右上腹部にかけての痛みとともに、強い「はきけ」や嘔吐を伴うことがあります。
胆管炎を起こすと、発熱や黄疸を伴い、重症化することがあります。
また胆石が胆のうにあるだけでも、食後、特に脂肪の多い食事の後に上腹部痛や不快感が繰り返されることがあります。
このような病気を調べるうえでも、まず腹部エコー検査が非常に役立ちます。
食事中から気持ち悪くなる―機能性ディスペプシア
「食べ始めるとすぐにお腹がいっぱいになる」
「少ししか食べていないのに苦しい」
「食事中からむかついて食べられなくなる」
このような症状の場合には、**機能性ディスペプシア(FD)**という病気があります。
胃カメラでは潰瘍やがんなど明らかな異常が見つからないにもかかわらず、
・食後の胃もたれ
・早期満腹感
・みぞおちの痛み
・みぞおちの灼熱感
などが続く病気です。
胃が食事に合わせて十分に広がる「適応性弛緩」という働きの異常や、胃から十二指腸へ食べ物を送り出す機能の異常、胃・十二指腸の知覚過敏など、いくつかの原因が関係していると考えられています。
「胃カメラで異常がなかったから何も病気はない」というわけではありません。
症状に応じて胃の運動を改善する薬や胃酸を抑える薬などを使って治療します。
胃の病気も忘れてはいけません
もちろん「はきけ」「むかつき」の原因として、胃そのものの病気も重要です。
胃炎、胃・十二指腸潰瘍、ピロリ菌感染、逆流性食道炎などでも症状が起こります。
また頻度は高くありませんが、胃がんなどでも「痛み」より先に、
「なんとなく胃が重い」
「以前より食べられない」
「食後に気持ちが悪い」
といった症状から始まることがあります。
症状が長く続いている場合には、年齢や症状、これまでの検査歴などを考慮して**胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)**を検討します。
「はきけ」は消化器以外の病気でも起こります
「はきけ=胃の病気」と考えがちですが、実際にはそうとは限りません。
片頭痛、めまいを起こす耳の病気、甲状腺疾患、腎機能障害、電解質異常など、消化器以外の病気でも「はきけ」は起こります。
女性では妊娠の可能性についても考える必要があります。
症状の経過によっては、胃カメラだけではなく血液検査や腹部エコーなどを組み合わせて原因を調べていきます。
こんな「はきけ」「むかつき」は早めに受診を
次のような症状を伴う場合には、「しばらく様子をみよう」とせず、早めに医療機関を受診してください。
・強い腹痛や胸痛を伴う
・何度も吐いて水分がとれない
・吐いたものに血が混じる
・黒い便が出る
・高熱を伴う
・皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
・強い頭痛や意識の異常を伴う
・体重が減ってきた
・食欲低下が続いている
・症状が数日たっても改善しない、あるいは何週間も繰り返している
特に、今までなかった「はきけ」「むかつき」が中高年以降になって続くようになった場合には、一度原因を確認しておくことが大切です。
「胃カメラが正常だったから大丈夫」とは限りません!
「はきけ」「むかつき」で受診された患者さんから、
「以前、胃カメラを受けて異常がなかったのですが……」と相談されることがあります。
しかし今回お話ししたように、「はきけ」「むかつき」の原因は胃だけではありません。
症状が起こる時間帯、食事との関係、脂っこいものとの関係、腹痛の有無、体重の変化、服用している薬などを確認することで、原因をある程度絞り込むことができます。
必要に応じて、
胃カメラ、腹部エコー、血液検査などを組み合わせて調べることが重要です。
「吐くほどではないから」
「痛くないから」
と我慢してしまう方も少なくありません。
しかし、長く続く「はきけ」「むかつき」も、体からのサインのひとつです。
症状が続いている場合には、一度消化器内科で相談してみてください。

監修 矢原青 やはらせい
医師 鶴見東口やはらクリニック 院長
消化器内視鏡学会 専門医・指導医
これまでに5万件以上の内視鏡検査・内視鏡治療を経験。
略歴)
横浜市立大学附属市民総合医療センター内視鏡部
松島病院大腸肛門病センター
