除菌後胃炎と除菌後胃がん
除菌後胃炎と除菌後胃がん
除菌後の胃の粘膜は、ピロリ菌による胃炎から粘膜が少なくなり『萎縮』と言われる状態になっています。ピロリ菌が消失することで粘膜の炎症も低下しますが、病理学的には一部の炎症細胞が残り、慢性の非活動性胃炎の状態です。
高度な『萎縮』が存在する場合、除菌後も胃がんのリスクが高いとされています。
除菌により胃がんの発生リスクは約半分に抑制されるといわれていますが、完全にゼロにすることは出来ません。
ピロリ除菌後に『萎縮』を背景に生じてくる胃がんは「除菌後胃がん」と呼ばれています。このがんは厳密にいうとピロリが感染していた時代に遺伝子に損傷を受け、除菌後に成長したものです。
多くの場合は分化型*で成長が穏やかですが、近年、急速に進行するタイプが問題になっています。
(*分化型とは元々の胃の組織に近い性質をもち、おとなしい性格のものを『分化した傾向にある』、『分化型』などといいます。)
除菌後胃がんには内視鏡で、以下のような特徴があります。
除菌後の分化型の胃がんは、小さく、境界が分かり難く、胃カメラで指摘することが難しいというイメージです。
除菌後胃がんの中に、急速に進行するタイプもあることが知られています。このタイプの組織は低分化*の傾向で、進行が早いため進行がんで見つかることが多いです。
萎縮が軽度な方に生じやすく、除菌後10年程経過してから発症することが多いと言われています。
(*分化型とは元々の胃の組織に近い性質をもち、おとなしい性格のものを『分化した傾向にある』、『分化型』などといいます。)
ピロリ菌が関連した胃炎に、鳥肌胃炎と言われる胃炎があります。胃の出口付近に鳥肌様の小隆起が散在した形態で、見た目が鳥肌に似ていることから『鳥肌胃炎』と呼ばれています。女性のピロリ菌感染者に多い傾向があります。
この胃炎もやはり除菌してからも、進行の早い低分化型のがんを合併することが知られています。
除菌後も5年間は毎年、胃カメラを受けることが推奨されています。早期に発見できれば良く、怖がる必要は有りません。ただ患者様にもリスクがあることが知っていただき、定期的な胃カメラを受けていただくことが大切と思います。
通常、ピロリ菌が未感染の方の胃カメラ検診の間隔は2年間が推奨されています。除菌後の方も2年でいいのでは?そういう声もありますが、除菌後の内視鏡フォローの間隔については議論されている最中であり、定まっていないのが現状です。
急速に進展する症例がいることを患者様に説明し、患者様ごとにリスクを配慮した検査間隔にすべきと考えます。
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