自己免疫性胃炎
自己免疫性胃炎
自己免疫性胃炎とは胃粘膜にある壁細胞に対する自己抗体(自分の細胞を攻撃してしまう抗体)により壁細胞が破壊され、胃炎の状態となります。また、ビタミンB12の吸収に必要な内因子も自己抗体により障害され、ビタミンB12が吸収できなくなります。最終的には ビタミンB12欠乏による悪性貧血を引き起こすことがあります。
酸分泌の減少に最終的に低酸状態が神経内分泌腫瘍(NET)と言われる特殊な腫瘍やがんを合併します。
自己免疫性胃炎は稀な疾患でしたが、近年では増加傾向にあります。本邦における(H. pylori)感染率は確実に低下しており、今後、日本の慢性胃炎の主因は自己免疫性胃炎の時代に移行していくものと推測されています。
自己免疫性胃炎は、自己免疫性疾患で原因はよく解っていません。免疫システムが誤って胃の壁細胞や内因子を異物と認識し攻撃することによって発症します。1型糖尿病や甲状腺疾患など、他の自己免疫疾患を持っている人に併発することが知られています。
初期段階では症状がほとんどないことが多いですが、病気が進行すると胃炎や貧血による疲労感、膨満感や食欲不振の症状が生じます。ビタミンB12欠乏による神経障害(手足のしびれ、感覚異常、記憶障害など)が現れることもあります。
胃炎を背景に胃がんが、約10%の症例に合併する報告があります。
胃酸のレベルが低下することにより、胃酸の分泌を促すためにガストリンと言われるホルモン濃度が上昇します。持続的に高ガストリン血症により神経内分泌腫瘍が発症します。
慢性の甲状腺炎や甲状腺機能亢進症などの自己免疫性疾患を約20%に合併している報告があります。
ピロリ菌による『胃炎→萎縮』は前庭部(胃出口付近)を中心に生じますが、胃の入口側(胃底部から体部)に有意な萎縮を認めるのが自己免疫性胃炎の特徴です。
萎縮した領域と残存した胃粘膜が特徴的な内視鏡像を作ります。またこれらの内視鏡像は一定ではなく進行の段階で変化します。
内視鏡所見と胃自己抗体陽性(抗壁細胞抗体あるいは抗内因子抗体のいずれか、もしくは両者が陽性)を証明することで診断となります。
(A)内視鏡所見(※細目)、組織所見(※細目)のいずれか、もしくは両者が自己免疫性胃炎としての要件を満たす。
(B)胃自己抗体陽性〔抗壁細胞抗体(※細目)あるいは抗内因子抗体のいずれか、もしくは両者が陽性〕
(A)と(B)の両者を満たすもの、ただし早期は組織所見と胃自己抗体陽性を満たすこと。
(A)のみを満たすもの、ただし早期は組織所見のみを満たすこと。
内視鏡所見<進行期>
胃体部~胃底部優位の高度縮を認める(胃体部で均一な血管透像を呈する)。
胃体部~胃底部では固着粘液、残存胃底腺粘膜、過形成性ポリープが見られることがある。
前庭部は必ずしも正色調とは限らない。斑状発赤、輪状模様、稜線状発赤が参考になる場合もある。上記項目のうち、主所見を必須とする。
早期(early stage)、進行最盛期(advanced florid stage)および進行終末期(advanced end stage)の3期に分けて診断する。
10倍以上を陽性とするが、陽性を考慮し今後変更される可能性がある。
鎌田智有他.自己免疫性胃炎の診断基準に関する附置研究会からの新提案
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