好酸球性食道炎
好酸球性食道炎
好酸球性食道炎(Eosinophilic Esophagitis, EoE)は、食道において好酸球というアレルギーに関わる白血球が異常に増加し、食道粘膜に慢性的な炎症を引き起こす疾患です。
原因は、主に食物によるアレルギーが原因と考えられています。
欧米人に多い疾患でしたが、近年は日本でも増加傾向にあり注目が集まっています。男性、中高年の方に多く見られます。
以下の4つが代表的です。
初回の発症は治癒し、その後再発がない。
再燃と寛解を繰り返す。
慢性的に症状が持続している。(成人の6割が持続型)
好酸球性食道炎は食物の抗原や花粉やハウスダストなど吸入による抗原暴露も発症の引き金になります。
食物アレルギーで頻度が高いものは以下の6つです。
アトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの合併が多く見られます。遺伝的素因よりも環境因子が強く関わっていると考えられています。
好酸球性食道炎の方の食道細菌叢に特徴があることが示されており、発症機序に関与していると推察されています。現在のところ明らかではありません。
胃カメラでは好酸球性食道炎(EoE)とGERDの両者が併存しているケースが多くあります。GERDにより粘膜の損傷が起こり、上皮内に抗原が容易に侵入し、EoEを発症させていると考えられています。
EoEとGERDはオーバーラップする疾患であるという概念です。
*数か所の生検が望ましい
診断基準では内視鏡による組織生検で好酸球が多数見られること、症状を有することが必須になっています。
胃食道逆流症でも似た所見を有するものがあり、注意が必要です。
好酸球性食道炎(EoE)の国際ガイドラインでは、初期治療として、以下3つが推奨されています。
胃酸を抑える飲み薬、副作用は少なく、約6割の症例で改善をみとめます。
ステロイドは強力に炎症を抑える効果のある薬です。プロトンポンプ阻害薬(PPI)が無効だった症例に使用されます。
日本では喘息治療に用いる吸入ステロイドの経口投与が行われています。効果は高いですが、休薬で高率に再燃します。長期的に服薬すべきか議論が必要です。
抗原暴露が無くなり、治療の効果は高く約9割の方で症状の改善を認めます。ただ、食事の楽しみがなくなり、長期的に続けるのは難しそうです。
症状の強い時に一時的な治療としては有効と思われます。
原因となりやすい6種(乳製品、小麦、ナッツ、鶏卵、大豆、魚介類)これらを除いた食事で改善した場合に、1種類ずつ試して『何で増悪するか』を確認して行きます。この原因食物を同定する判定には長期の入院が必要になります。7割の症例で有効とされています。
乳製品と小麦が原因になっている頻度が高いのですが、効果は5割に達しません。アレルギーテストでは、原因食物が指摘しきれないという結果のようです。
原因食物が判明した方には、簡便かつ有効な治療と思われます。
消化器内科 #30 Vol.4 No.5 , 2022
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