肝機能障害を指摘されたら・・脂肪性肝炎とは|横浜鶴見区の消化器内科・内視鏡(胃・大腸カメラ)|鶴見東口やはらクリニック

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肝機能障害を指摘されたら・・脂肪性肝炎とは

肝機能障害を指摘されたら・・脂肪性肝炎とは|横浜鶴見区の消化器内科・内視鏡(胃・大腸カメラ)|鶴見東口やはらクリニック

2024年10月16日

皆様は健診を受けていますか。
健診で指摘される異常で、肝機能障害はとても一般的です。

その中で、比較的多くの人が脂肪肝炎によって、肝機能障害をきたしています。この脂肪性肝炎は侮れない疾患だと思っています。

今回は肝機能障害とは?から、脂肪肝炎の成り立ち、そして治療に至るまでを皆様と一緒に勉強したいと思います。

肝機能障害とは?肝臓で何が起きている?

健診の採血の項目のAST ALT γGTPなど異常から肝機能障害の指摘を受けますね。
これらは通常は肝細胞内にある酵素です。これらが血液中に出ている、それは何らかの理由により肝細胞が壊れて、細胞内の酵素が血液中に漏れ出ていると言う事です。

これらの値が高ければ、それだけ破壊されている肝細胞が多い強い事になります。

AST(GOT) 

おもに肝細胞内にあり、あらゆる種類の肝障害のときに血液中に漏れ出て高値となります。また、正確には肝臓以外の細胞、心筋細胞、赤血球などにも存在しているため、これらの細胞が破壊されても高値になります。

ALT(ALT)

肝臓内に多く存在する酵素で肝細胞が破壊されている時に高値になります。また、脂肪肝炎、ウィルス性肝障害などのときに優位に高値になる特徴があります。

γGTP

アルコール多飲者で高値になる事が有名ですが、主に肝臓内の胆管細胞が破壊されると優位に上昇します。胆汁の流れがうっ滞している様な状態や薬剤性肝障害でも高値になることが知られています。

鑑別すべき慢性肝疾患

  • ウイルス性肝疾患慢性
  • 原発性胆汁性胆管炎
  • 原発性硬化性胆管炎
  • 自己免疫性肝炎
  • 薬剤性肝障害など

詳しくは成書で確認してください。

これらの肝障害は血液検査、画像検査を組み合わせることでおおかた診断することが可能です。ただ確定診断のために肝生検(肝臓に細い針を刺して肝細胞を採取する)が必要になる疾患があります。

肝障害の経過、必ず肝硬変に向かっている

肝臓内の線維化

軽度の肝機能障害も放置すると肝硬変へと移行します。さきにも述べたように肝障害は肝細胞が壊れている事。細胞が壊れ、空いたスペースに線維が置き換わります。継続的に線維化が進み、硬くなった状態、これが肝硬変です。

肝硬変になると生命維持装置としての肝臓の役割が果たせなくなり、腹水、黄疸などの症状がでるだけでなく、肝細胞がんの発生母地となります。お解りのように、線維化の程度が肝障害の段階を最もよく表し、生命予後に反映します。肝臓の線維化は超音波検査で測定することが出来ます(後述)。継続的に肝障害を指摘されて来たのであれば、線維化の程度がどれくらいなのか?を判断し、治療・経過観察の方針を考慮する事が必要になります。

脂肪性肝炎について

NAFLD定義と概念

以下は、NAFLD/NASH診療ガイドライン2020からの抜粋です。

非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)は、主にメタボリックシンドロームに関連する諸因子とともに、組織診断あるいは画像診断にて脂肪肝を認めた病態である。アルコール性肝障害、ウイルス性肝疾患、薬物性肝障害などの他の肝疾患は除外する。NAFLDは病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver: NAFL,以前の単純性脂肪肝)と進行性で肝硬変や肝がんの発生母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分類される。

まとめると、お酒を飲まない非アルコール性の脂肪肝( NAFLD: ナッフルディと呼びます)の中には、あまり臨床的に問題とならない単純性脂肪肝(NAFLナッフルと呼びます)の人と

急速に肝炎が進行し肝硬変になっていく非アルコール性脂肪肝炎:NASH(ナッシュと呼びます)の人がいる。

NASHの疫学

NASHの疫学

(Cirrhosis:肝硬変 HCC:肝がん)
Cause,Pathogenesis,and Treatment of Nonalcholic Steatohepatitis Diehl AM , and Day C.N Engl J Med .2017

成人人口の1/4がNAFLDになり、そのうちの1/4がNASHになり、更にそのうちの1/4が肝硬変になり、更にそのうちの数パーセントが肝がんになるといわれています。

なぜNASHにしてしまうのか?

NASH発症の最も重要な因子は肥満で、メタボリックシンドロームが背景にあるといえます。その他NASHの成り立ちとして、年齢、遺伝子的な素因もある事がわかっていますが、それだけではなく、肝、腸管、脂肪組織との相互的な作用があり、かなり複雑です。これらが同時進行的にNASH発症に関与していると考えられています。

肥満によるメタボな代謝が肝細胞を破壊する。お酒もほとんど飲まないのに、肥満なだけで肝硬変になる。耳を疑うような、信じたくもない話ですが、事実です。実診療のなかでも、健診で指摘される肝機能障害のほとんどがNAFLD/NASHの方だと言えます。特別な人の珍しい疾患でなく、メタボな方の日常に生じているが、恐さはあまり認識されていない・・・とても厄介に思います。

NASHの恐ろしさ

メタボリック・ドミノという言葉があります。体中にメタボリックな代謝が吹き荒れるとドミノ倒しのように、次々と『高血圧』『糖尿病』『高コレステロール血症』『高尿酸血症』などの生活習慣病が生じてくる事を意味しています。

そのため、NAFLDの進行に伴い心血管イベントリスクが上昇することが報告されています。

Targher G et al.  Non-alcoholic fatty liver disease and risk of incident cardiovascular disease: J Hepatol 2016

また、韓国の研究では男性の大腸がんのリスクは2.01倍高く、女性の乳がんのリスクが1.92倍と報告されています。

Kim GA et al. Association between non-alcoholic fatty liver disease and cancer incidence rate. J Hepatol 2017

メタボリックな代謝は動脈硬化促進だけでなく、がんの発生頻度も高くするようです。
発がんに関して言うと胃がん、前立腺がんも増加するという報告もあります。

肝線維化の評価を

NAFLD/NASHのガイドラインの中で「生命予後に最も関連する病理所見は、肝線維化であり、線維化の程度に応じて経過観察方法・治療法を考慮すべきである。」とあります。

つまり、肝線維化の状態を知る事で、NAFLD/NASHの進行度合が確認でき、今後すべき事が判断できます。肝線維化の程度を知るために、肝生検が出来れば一番良いのですが、中々、働き盛りの人達に入院し肝生検を勧めるのは難しいのが現状です。

フィブロスキャンといわれる手法で、腹部エコー検査時に肝臓の線維化を測定することが出来ます。特殊な波と振動を肝臓に当て、痛みなく、その場で肝線維化の程度を推測する事が可能です。これを肝硬度測定と言います。

NAFLD/NASHの治療について

食事運動療法による体重の減少が、まず行う基本治療です。その効果は実証されています。
5%の体重減少により、QOLが改善し、7%の体重減少の達成で肝臓の組織学的な改善が得られるとの報告があります。

NAFLD/NASHの治療について

表からわかるように、減量効果は絶大です、組織学的な線維化までも改善します。

ただ減量の達成率が低く、減量への動機づけも重要だろうと思われます。

診療の中で、患者様からは「油ものはほとんど摂らないのですけど?」という疑問の声を聞きます。脂質を取らずとも、過剰な糖質や炭水化物が、体の中で脂肪に変換され、蓄えられています。ですから、食事内容としては、低カロリー食が基本です。

炭水化物制限と脂質の制限、どちらのカロリー制限も有効だったと報告されています。
メタボになりやすい食習慣を下に示します。なぜこれらがいけないか、内分泌的な根拠も解明されています。

また、過剰な果物(果糖)の摂取は脂肪肝の助長し、疾病の促進にかかわるとの報告があります。

注意すべき脂肪の付きやすい食習慣

注意すべき脂肪の付きやすい食習慣

Kamada Y, et al. Japan Study Group of NAFLD.
J Gastroenterol.2021;56:1045-1061

運動の有用性のエビデンス

運動の有用性のエビデンス

Hashida R, et al. Hepatol. 2017;66:142-152

今日から出来るアクションプラン!

毎食のお米の量を半分にしましょう

これに慣れてきたら1/4にしていき、おかずの脂分を除いて食べる。まずこれを実行していきます!
食事制限は必ず設けましょう!

運動のみで行う減量は、かなり効率が悪くなってしまいます。

運動は有酸素運動を20分以上、週3~4回から無理なく始めましょう

慣れてきたら30分以上にしていきます、目標は40分です。ウォーキングから始め、慣れてきたら早歩き→ジョギングにしていきましょう。

ウォーキングは、あくまで早歩き!汗がじんわりと出てくるペースです。
息が切れないペースで問題ありません。

過激なダイエットはしては行けません

大切なのは出来ることを根気よく続けることです。
大きな制限を設けても辛いだけで、続かずにリバウンドします。

小さな制限を続け、習慣化させることが大切です。習慣化してしまえば辛さは感じ難くなります。
習慣化したら次の制限へ・・といった具合に。

体重を指標にして、少しずつ減量がなされている事を確認する

体重計には毎日乗りましょう!体重を指標に判断することがポイントです。

少しずつでいいので、体重が落ちていることを確認して行きましょう。
減量が認められなければ食事量を減らすか、運動強度を上げる、どちらかが必要になります。

減量のペースは0.5-1kg/月位を基準に調節しましょう。

薬物治療について

併発している基礎疾患によって導入される薬剤が異なります。

薬物治療について

※有効度は学会推奨とエビデンスレベルからの私的に判断したものです。

ビタミンなので比較的始めやすい薬剤です。しかしながら、過剰な投与で出血傾向きたす事があり、長期的な安全性も不確かな薬剤でもあります。

薬物治療はメタボな代謝を根幹から排除出来た訳ではありません。

肥満を解消することなしにメタボリックシンドロームの根幹を断つ事は出来ません。それを踏まえた上での薬物治療になります。

ですから、肝障害の程度が著しいとき、また、減量による効果が期待的ないときに導入されるべきと考えます。

減量手術について

海外では高度肥満のNSAH患者に対して、減量手術をした研究がなされ、その有効性が確認されています。
本邦でもH28年の診療報酬改定に伴い、腹腔鏡下スリープ状胃切除術が保険適応で受けることが出来ます。

手術の適応

  • 6ヶ月以上の内科的治療が行われているにも関わらずBMI35kg/㎡以上である事
  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を有している事

痩せるために外科手術の介入がなされ、そこにも国の医療費が注がれる。飢餓で苦しむ人よりも肥満で苦しむ人が、圧倒的に多くなった世の中の今後の課題とも言うべき疾患です。

まとめ

肝機能障害は、メタボの初期に現れます。この体からのアラートと言うべき肝機能障害を放置せず、今後自分はあらゆる生活習慣病になる可能性があると認識する事が大切と考えます。そして根源である肥満を解消するように努めましょう。減量が一番スマートな治療法と言えます。

当院でも患者様のスタイル毎にアドバイスさせていただきます。

ここまで読んでいただきありがとうございます。今後も皆様の健康状態の更なるアップのために役立つ情報をお知らせいたします。

参照

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