大腸内視鏡による診断と治療
診断
大腸ポリープが発見された場合、放置してよい「非腫瘍性」なのか、あるいはがんを含む「腺腫性」なのかを確認します。大腸内視鏡検査では、病変の大きさや形だけでなく、表面の微細構造、腺管開口部などを観察することで病変の深さや治療の必要性を判定できます。この判断のために特殊な光(NBI:Narrow Band Imaging)を当て、病変の画像を拡大して観察する方法が用いられることもあります。特殊光の観察で治療が必要な病変か、ある程度診断はできますが、原則的には病変を採取して、組織を顕微鏡で確認する病理組織検査によって確定診断が行われます。
治療
内視鏡治療の適応となるポリープは、一般的には「径6ミリ以上の良性のポリープ」と「リンパ節転移の可能性がほとんどなく内視鏡を用いて一括で切除できるがん」です。ただし、径5ミリ以下の良性ポリープでも、平坦あるいはへこんだ形のもの、がんとの区別が難しいものは適応となります。
がんやポリープを切除する内視鏡の術式にはいくつかの種類があります。
代表的なものは「ポリペクトミー」、「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」といわれるもので、これらは病変の形や大きさに応じて使い分けられます。
【ポリペクトミー】
キノコのように茎があるタイプのポリープや出血の可能性の高い大きめのポリープに用いられます。茎の部分にスネアという金属性の輪をかけて締め付け、同時に高周波電流を流して切除します。
【コールドポリペクトミー】
コールド:電気を流さずに切除する、つまり電気による粘膜の火傷(やけど)を作らない切除の方法です。熱損傷がないことで、ポリープ切除の合併症として避けられないと考えられていた術後の出血が起こりづらくなります。
ただし、1cmを超えるような大き目のポリープや抗血栓薬(血液がサラサラとなり、出血が止まりづらくなる薬)を内服されている方は、従来の通電する切除方法が望ましい場合があります。
当院でも1cm以下の小さ目のポリープに関してはこの方法を導入しています。
手術費用に違いはありません。
コールドポリペクトミーの方法
【内視鏡的粘膜切除術(EMR)】
平坦なタイプのポリープや癌を疑う病変に対して用います。粘膜の下に生理食塩水などの薬液を注入してポリープ全体を持ち上げ、そこにスネアをかけて切除します。粘膜下層を大きく切除できることから、癌を取り残しがない様に切除できます。
【内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)】
大きな病変や薬液で病変が持ち上がらないときなどに用いられます。粘膜の下に生理食塩水などの薬液を注入し、ポリープのできている粘膜を持ち上げたうえで専用の電気メスで周辺の粘膜を切開し、病変を少しずつ剥離して切除します。
こうした内視鏡手術で、ほとんどのケースでポリープを切除できますが、進行の度合いや患者さんの既往歴などによっては、開腹手術になることもあります。
大腸癌は、この腺腫を介して発癌するのが、主経路である事がおおよそ証明されています。良性の腫瘍性ポリープである大腸腺腫は、治療せずに放置すると80%の確率で大腸がんに移行するといわれています。発生してから数週間、数ヶ月で大腸がんになるわけではなく、数年かけてゆっくり育ち、癌が混在するようになります。したがって、大腸ポリープを大腸がんになる前に定期的な大腸内視鏡検査で切除することが、最も有効な大腸がんの予防法といえます。健康診断や年齢、気になる症状を機に、定期的に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。