2025年2月12日

はじめに
大腸ポリープを切除すると、後日、病理結果の報告があります。
病理とはポリープそのものをスライスして、顕微鏡で観察した所見のことで
癌なのか?良性なのか? は、もちろんのこと
どのような性格の組織で、どのような特徴があるのかが解ります。
ここでは大腸ポリープの代表的な病理像を2つ説明します。
大腸腺腫tubular adenoma
◯大腸ポリープの一般的な種類であり、良性ですが大きく育つと癌を含むようになります。
大腸癌はこの大腸腺腫が成長して発生することが、おおよそ解っています。
大腸腺腫の特徴として、大きくなると異型(悪性度)が進む傾向があります。
◯癌を含む率も大きさにより異なり、
大きさ6-9mmのポリープで、3.3% 大きさ10mm以上のポリープで、28.2% の癌化率
と報告されています。
これから読み取れることは、
10mm未満でも癌になっている可能性があり、なるべく、大きく育つ前に切除する方が良さそうです。
◯大腸腺腫adenomaの病理は、さらに次の2つに分類されて報告が来ます。
・低異型度腺腫 tubular adenoma, low grade
low gradeとは、細胞の異型が軽度ということを指し、細胞が正常に近い性質といういことを意味します。
細胞の異型が軽度なポリープは成長もゆっくりで、サイズの小さめなポリープに多く見られます。
→次回の大腸カメラは、ポリープの大きさにもよりますが、1-2年後で受けることをお勧めします。

・高異型度腺腫 tubular adenoma, high grade
high gradeとは細胞の異型が高度であることを意味し、癌よりに変化が始待っている病変と考えることができます。やや大きく育った10mm前後のポリープに多く見られます。
→この病変を切除した場合、次回の大腸カメラは1年後が推奨されます。
大腸鋸歯状病変(SSL ;sessile serrated lesion)
略して、SSL病変といわれています。
◯この病変は右側の大腸に優位に存在し、平坦な隆起で10mm以上のことが多く、白っぽい色調を呈します。

◯この病変の病理所見がギザギザしていることから、鋸歯状;ノコギリの歯状、というような名称になっています。
◯通常は成長がゆっくりで、悪性度は低いポリープと考えられていますが、
病変の中心に陥凹や発赤がみられると異型の高い組織が含まれている可能性があります。
内視鏡ではこの所見をアクセントとよび、『アクセントがあるSSL病変で、癌の可能性がある』の様に使われます。
◯詳しいことは解っていませんが、SSL病変の癌化率はおおよそ2-5%前後と見積もられています。報告により、まちまちで正しい治療指針はこれから提案されるものと思います。
◯平坦で幅広い病変が多く、分割切除になってしまうケースが多々見られます。
私見ですが、SSL病変切除のフォローの期間は
一括切除できている場合は2年後の経過観察
分割切除の場合には1年後の経過観察
と考えてます。
最後に
癌化のリスクがある一般的な大腸ポリープを説明しました。
このように、大腸カメラでのポリープ切除は、癌の予防になります!
長期間、開けずに大腸カメラを受けられることをお勧めします。
参考文献
大腸ポリープ 診療ガイドライン2020 改訂第2版
文責 矢原 青